わった。外が見えないでは、こまるなあ」
 春夫は、心細くなってきました。が、そのとき、気がついたことがありました。
「青木さん。そんなら、海面へうかんで、昇降口をあけたら、どうですか」
「そんなことをしては、危険だよ。先に潜望鏡を出して、あたりに敵のすがたのないことをたしかめた上で、うきあがるようにしなければなあ」
「なるほど、それはそうですね」
 春夫は、またも失敗したかと、顔をあかくしながら、ふと深度計の針を見ました。するとおどろいたことに、深度計は零をさしていました。
「青木さん。この潜水艇は、もう海面へうきあがっているのじゃないのですか」
「そんなことはない」
「だって、これをごらんなさい。深度計の針は、零をさしていますよ」
「そんなはずはない」
 学士は、すぐさま、つよく言いかえしましたが、念のために目をうつしてみますと、これは意外!
「おや、いつの間に、深度が零になってしまったんだろうか。これはますますへんだぞ」
 学士は深度計のガラスを、手でもって、かるくとんとんと叩《たた》いてみました。それは、もしや針がどこかにくっついていて、うごかなくなったのではないかとおもい、針を
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