ると、ごとごとと音がして、ポンプがまわりだしました。それから、しゅう、しゅうと音がして、酸素ガスが鉄管から出てきました。そんなことが三十分ほどもつづいているうちに、室内の毒ガスは、きれいに洗いきよめられてしまいました。
 学士は、そこで防毒面をとりました。
「大丈夫だ」
 学士は、うなずきました。そしてこんどはよくねむっている春夫少年のそばによって、防毒面をぬがせてやりました。春夫のひたいや、鼻のあたまには、玉のようなあせがふきでていました。学士は、ハンカチーフを出して、それを念入りにふいてやりました。
「さあ、これでいいだろう。では、こっちもしばらくねむるとしようか」
 学士は、ひとりごとをいって、椅子《いす》にこしをかけ、配電盤のまえの机に両ひじをつき、顔を腕のうえにのせました。
 やがて、学士もまた、ぐうぐうといびきをかきはじめ、ゆめ路《じ》をたどったのでありました。


   深度零《しんどれい》


 春夫少年は、ふと目がさめました。なにか大きなもの音をきいたように思いました。毛布から出て、むくむくと起きあがってみますと、青木学士が、潜望鏡にとりついて、うんうん呻《うな》って
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