へ、横にぐっとまわしはじめました。
「あぶない!」
 だれかがさけんだのです。
 そのときはもうおそかった。豆潜水艇をつったくさりが、ぎしぎしなると同時に、くさりはすべり、豆潜水艇の胴から外《はず》れました。あれよというまに豆潜水艇は、がたんとかたむき、そして次ぎの瞬間には、艇はくさりからぬけ、大きな水音をたてて、海の中におちてしまいました。
 さあ、たいへん。せっかくのえものが、海底へおちてしまったのです。


   豆潜水艇の中


 さあ、たいへんなことになりました。
 みなさんがごしんぱいの豆潜水艇は、まっくらなふかい海のそこに横たおしになってねています。
 あたりの海底には、林のように藻《も》や昆布《こんぶ》るいが生いしげっていて、これがひるまなら、そのふしぎな海のそこの林のありさまや、ぶくぶくと小さな泡が上の方へつながってのぼっていくのが見えるはずですが、今は夜中のこととて、何も見えず、一切まっくらです。
 さあ、豆潜水艇は、もうたすかる道はないでしょうか。中にのっている水上春夫君と青木学士は、今どうなっているでしょうか。二人とも、怪しい外人のなげこんだ毒ガスにやられて、冷
前へ 次へ
全44ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング