なんて、この時局がら、きつい手がらだ。あとでうんと懸賞金が下るだろうぜ」
「その懸賞金が、目あてさ。その金がはいれば、おれは飛行機工場をたてるつもりさ」
「はははは、もう金のつかいみちまで、考えてあるのか。手まわしのいいことだ、はははは」
あぶない荷あげ
「さあ、その大したえものを、こっちの船へ起重機《きじゅうき》でつりあげるから、お前たち、下にいて、ぬかるなよ」
「おい来た。大丈夫だい。まずこのバスがめんどうだから、そら、みんな手をかせ。こいつを海の中へ、たたきこんでしまうんだ」
「よし、みんな手をかせ」
「うんとこ、よいしょ」
だるま船の中では、豆潜水艇のうえにかぶせてあったバスの車体を、みんなでもちあげました。
そして、舷のそばまでもっていって、よいしょと海中へなげこみました。大きな水音がすると同時に、船がぐらっとゆれました。
いきおいあまって、二人ほど、海中へおちこんでしまいました。しかし、いずれも船へおよぎついてきました。
さあ、それからいよいよ、豆潜水艇を起重機でつりあげる作業です。
本船からは、起重機の腕が、ぐっとだるま船の上にのびてきました。そしてその先から、くさりがじゃらじゃらと音をたてておりてきました。
「困ったなあ。この潜水艇は、丸いうえにすべっこくて、くさりをかけるところがありゃしないよ。トニーの旦那、どうしましょう」
「どうしましょうといって、どんなにしてもつりあげなくちゃ、せっかくのえものが、役に立たんじゃないか」
「でも、こいつをくさりでつりあげるのは、ちょいと大へんですぜ」
「ずるをきめこまないで、さあ、くさりをこういうぐあいにかけて、むすんだむすんだ」
「こういうぐあいにですかい。そんなぐあいにいくかな。なんだか、あぶないと思うが……」
「やれ。やるんだといったら、やるんだ」
トニーがしかりとばすので、みんなも仕方なく、大汗を出して、くさりを豆潜水艇にぐるぐるとまきつけました。
「おーい、まだかい」
本船では、どなります。
「もうすぐだ。よし、起重機のくさりをまけ」
「おいきた」
がらがらと、起重機のくさりがまきあがっていきます。やがて、くさりはぴーんとはり、豆潜水艇はしずかに、だるま船の上につりあげられていきました。
「うまくいった。そこで超重機をまわして……」
起重機は、豆潜水艇をつったまま、本船へ、横にぐっとまわしはじめました。
「あぶない!」
だれかがさけんだのです。
そのときはもうおそかった。豆潜水艇をつったくさりが、ぎしぎしなると同時に、くさりはすべり、豆潜水艇の胴から外《はず》れました。あれよというまに豆潜水艇は、がたんとかたむき、そして次ぎの瞬間には、艇はくさりからぬけ、大きな水音をたてて、海の中におちてしまいました。
さあ、たいへん。せっかくのえものが、海底へおちてしまったのです。
豆潜水艇の中
さあ、たいへんなことになりました。
みなさんがごしんぱいの豆潜水艇は、まっくらなふかい海のそこに横たおしになってねています。
あたりの海底には、林のように藻《も》や昆布《こんぶ》るいが生いしげっていて、これがひるまなら、そのふしぎな海のそこの林のありさまや、ぶくぶくと小さな泡が上の方へつながってのぼっていくのが見えるはずですが、今は夜中のこととて、何も見えず、一切まっくらです。
さあ、豆潜水艇は、もうたすかる道はないでしょうか。中にのっている水上春夫君と青木学士は、今どうなっているでしょうか。二人とも、怪しい外人のなげこんだ毒ガスにやられて、冷たくなっており、いま海のそこにねていることにも気がつかないのではないでしょうか。ところが、そのときです。とつぜん豆潜水艇が、ぱっと黄色い二つの目をひらきました。
いや、それは本当の目ではありませんでした。それは豆潜水艇の横腹についている、丈夫なガラスをはめた窓《まど》に、あかりがともったのであります。もちろんそのあかりは、艇の中にあるあかりです。窓から外へ、さっとながれだした黄色い光が、すこしずつうごいて、海藻《かいそう》の林をてらしつけます。その間にねむっていた鯛《たい》のようなかたちをした魚の群が、とつぜん、まぶしいあかりにあって、あわてておよぎはじめました。まるで銀の焔《ほのお》がもえあがったようです。あかりは、なおもすこしずつうごいていきます。
はてな、一たいどうして豆潜水艇の中にあかりがともったのでしょうか。
そうなると、豆潜水艇の中を、ちょっとのぞいてみたくなりますね。では、のぞいてみることにしましょう。
豆潜水艇の中は、うすぐらい電灯でてらされていました。
ごっとん、ごっとん、ごっとん。
重い機械がまわっているらしく、かなり大きな音がしています。それはエンジン
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