へ、横にぐっとまわしはじめました。
「あぶない!」
だれかがさけんだのです。
そのときはもうおそかった。豆潜水艇をつったくさりが、ぎしぎしなると同時に、くさりはすべり、豆潜水艇の胴から外《はず》れました。あれよというまに豆潜水艇は、がたんとかたむき、そして次ぎの瞬間には、艇はくさりからぬけ、大きな水音をたてて、海の中におちてしまいました。
さあ、たいへん。せっかくのえものが、海底へおちてしまったのです。
豆潜水艇の中
さあ、たいへんなことになりました。
みなさんがごしんぱいの豆潜水艇は、まっくらなふかい海のそこに横たおしになってねています。
あたりの海底には、林のように藻《も》や昆布《こんぶ》るいが生いしげっていて、これがひるまなら、そのふしぎな海のそこの林のありさまや、ぶくぶくと小さな泡が上の方へつながってのぼっていくのが見えるはずですが、今は夜中のこととて、何も見えず、一切まっくらです。
さあ、豆潜水艇は、もうたすかる道はないでしょうか。中にのっている水上春夫君と青木学士は、今どうなっているでしょうか。二人とも、怪しい外人のなげこんだ毒ガスにやられて、冷たくなっており、いま海のそこにねていることにも気がつかないのではないでしょうか。ところが、そのときです。とつぜん豆潜水艇が、ぱっと黄色い二つの目をひらきました。
いや、それは本当の目ではありませんでした。それは豆潜水艇の横腹についている、丈夫なガラスをはめた窓《まど》に、あかりがともったのであります。もちろんそのあかりは、艇の中にあるあかりです。窓から外へ、さっとながれだした黄色い光が、すこしずつうごいて、海藻《かいそう》の林をてらしつけます。その間にねむっていた鯛《たい》のようなかたちをした魚の群が、とつぜん、まぶしいあかりにあって、あわてておよぎはじめました。まるで銀の焔《ほのお》がもえあがったようです。あかりは、なおもすこしずつうごいていきます。
はてな、一たいどうして豆潜水艇の中にあかりがともったのでしょうか。
そうなると、豆潜水艇の中を、ちょっとのぞいてみたくなりますね。では、のぞいてみることにしましょう。
豆潜水艇の中は、うすぐらい電灯でてらされていました。
ごっとん、ごっとん、ごっとん。
重い機械がまわっているらしく、かなり大きな音がしています。それはエンジン
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