島のうしろからピストルをつき出そうとしたが、思い出して、そのまま引込めた。いくらここで、ピストルを向けてみても、何にもならないのであった。なぜならば、沖島を撃って傷つけると、あとは誰が、この地底戦車をうごかすのか。リント少将は、ピストルをにぎって勝ってみるのはいいが、少将は、やがてこの戦車の中で、飢《う》えと寒さのため死んでしまうだろう。沖島をピストルで撃つことは、この地底戦車の中を自分の墓場とすることだと気がついたリント少将は、せっかく出したピストルを、引込めなければならなかったのである。
「今に、氷上へ、お出しいたしますよ。もうしばらくのご辛抱《しんぼう》です」
 沖島は、ゆうゆうと操縦のハンドルをにぎっていた。
(全く、ピート一等兵は、かわいい男だ。空襲さわぎのとき、パイ軍曹のすきを見て自分のうしろへ、この私をかくし、そして氷上へ出してくれたからな。そのおかげで、自分はうまい機会にリント少将を、戦車の中に缶詰にして、とっさに氷の下へもぐりこんだわけだが、まるで神さまがまもってくださるように、とんとん拍子にいったじゃないか!)
 沖島は、のん気に、そんなことを、思い出していた。
 
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