大困難を克服しまして、この貴重なる地底戦車を閣下のおられるところまで、持ってこなければならんと大決心しまして、パイ軍曹どのと、この幽霊どのをはげましながら、ついにかくのとおり閣下のまえまで乗りつけることに成功しましたわけで、その勇敢なる行動については吾《わ》れながら……」
と、ピート一等兵は、はなはだ正直でないことをべらべら喋りだして、止めようもない。
投獄《とうごく》
リント少将は、さすがに、南極へ派遣されるほどの名将だけあって、早くも、わけを察した。
少将は、幕僚の参謀たちをふりかえり、
「どうだ、事情は、のみこめたろう。要するに、パイ軍曹とピート一等兵とは、この地底戦車の中にとじこめられ、蒼《あお》くなっていた。そのとき、戦車の中にかくれて、密航していたこの黄いろい幽霊と名のる男が、二人をはげまして、ともかくも、地底戦車を、ここまで、のりあげてきたのだ。そうではないか」
参謀たちも、このリント少将のことばに、うなずいた。
少将は、なおも、ことばをついで、
「地底戦車は、一台のこらず、海底にしずんでしまったことと思っていたが、こうして一台でも助かったのは、わがアメリカ陸軍のため、よろこばしいことだ。われわれは、この一台を、できるだけうまく使って南極におけるわれわれの仕事を、やりとげなければならない」
参謀たちは、また大きくうなずいた。
「ところで、この黄いろい幽霊の始末だがどうしたものであろう」
参謀たちは、顔を見合せたが、
「軍司令官閣下。こいつは、地底戦車の秘密を知った奴ですから、今すぐに、銃殺してしまうべきであります」
「自分も、同じことを考えます。こいつは日本のスパイに、ちがいありませんから、殺してしまうのが、よろしい。このまま、生かしておくと、またどんなことをするかもしれません。日本人という奴は、大胆なことをやるですからなあ」
みんな、沖島を早く銃殺せよというのだ。
少将は、そこで顔を、沖島の方へむけなおして、大胆不敵な彼の面を、しばらくじっとみつめていたが、
「おい、黄いろい幽霊。本官が、日本の将校なら、君の勇敢な行動を大いにほめてやるところだが、余はアメリカの軍司令官だから、そうはいかんぞ。只今から、君は、監房につながれることになった。もうあきらめて、おとなしくしているように」
沖島速夫に、ついに、きびしい刑罰が、きまったのであった。しかし彼は、べつに顔色をかえるでもなし、にこにこして、リント少将のことばを、きいていた。
それから沖島は衛兵にまもられて、監房につれていかれた。
監房は、氷の中にあった。つまり、氷を下へ掘って、氷の地下室が出来ている。そこに、氷の監房がつくられてあった。
監房の扉は、木でこしらえてあった。のぞき窓も、やはり木で、くみたててあった。氷と木材との合作《がっさく》になる監房であった。
沖島速夫は、このふしぎな監房の中に、押しこめられたのであった。
なかは、いたって、せまい、やっと、二メートル平方ぐらいであった。
空気ぬき兼《けん》明《あか》りとりの天窓が、天井に空いていた。
この監房は、ふしぎに寒くない。氷の中にとじこめられているのだから、冷蔵庫の中に入っているようなもので、さぞ寒かろうと思ったのに、かえって温い感じがしたのである。
沖島は、缶詰をいれてきたらしい箱のうえに、腰をおろした。彼はべつに悲しんでいる様子もなかった。
「さあ、ここですこしねむるかな」
彼は、腰をかけたままいねむりをはじめた。どこまで大胆な男であろう。
しばらくねむった。そのうちに、彼をよぶものがあった。
「おい、黄いろい幽霊!」
はて――と、眼をさますと、窓のところに二つの顔が、沖島の方をのぞいていた。
一つは、衛兵の顔、もう一つの顔は、ピート一等兵の大きな顔であった。
「おい、コーヒーをもってきてやったよ」
ピートがいった。
友情
コーヒーをもってきてやった――と、ピート一等兵はいった。そして窓のところから、うまそうな湯気《ゆげ》のたつコーヒーの器《うつわ》が見えた。
沖島は、腰かけから立って、窓のところへいった。
「コーヒーを、もってきてくれたのか。どうも、すまんなあ」
「すまんことはないよ。わしは、ここだけの話だが、お前に、感謝しているよ……」
「おい、ピート一等兵。ことばをつつしめ」
と、衛兵が、よこで、こわい顔をした。
「だまっていろ、お前には、わからないことだ」
とピートは、衛兵につっかかった。
「そのわけは、お前がいなければわしは、地底戦車の中で、腹ぺこの揚句《あげく》、ひぼしになって死んでしまったことだろう。お前のおかげで、こうして、氷の上にも出られるし今も、たらふくビフテキを御馳走《ごちそう》になったりして、ま
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