》が頂戴するから、悪く思うなよ」
「なッ、なにをいう。何物かッ貴様は――」
「岩だ!」電話はハタと切れた。


   理科大学の盛土《もりつち》


「岩だ。それ――」
 と、命令一下、かねてこんなこともあろうかと用意して待っていた特別警察隊は、ラジオを備えた警視庁自慢の大型追跡自動車で、京浜《けいひん》国道を砲弾のように疾走《しっそう》して行った。
 そのころ三吉と大辻とは、理科大学の新築場《しんちくじょう》に立って首をひねっていた。
 月島海岸から十台のトラック隊を追跡して行った二人は、思いがけなくも、本郷の理科大学の中へ着いたので驚いたわけだった。
 そして、そこまで送ってくれた自動車の中から、一人の怪人物がノコノコおりてきたが、これがいま鉱物学者として世界に響いている、真鍋博士だったので、二度びっくりだった。博士はスタスタと研究室へ入ってしまった。
(二度あることは、きっと三度ある)
 と諺《ことわざ》にいうとおり、二人はとうとう三度目のびっくりにぶつからねばならなかった。
「この盛土はおかしいね」と三吉少年は叫んだ。
「そういえばおかしいね」と大辻も目をショボショボさせて叫ん
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