“これは時限爆弾だな、そしてもうすぐ爆発の時刻が来るな”と感じたその刹那《せつな》、博士は釦《ボタン》を押した。すると博士は椅子ごと、奈落《ならく》の底へガラガラと落ちていった。しかも博士の身体が通り抜けた後には、どんでんがえしで何十枚という鉄扉《てっぴ》が穴をふさいだため、かの時限爆弾が炸裂《さくれつ》したときには、博士は何十枚という鉄扉の蔭にあって安全この上なしであったというのです」
「なーるほど、ふんふんふん」
「しかし博士の部屋は、跡形《あとかた》なくなってしまったので、博士はもうそこにはいられず、或るところへ移った」
「それはどこかね。早く話してくれ」
「なにもかも教えましょう。香港にある博士の別荘ですよ、そこは」
「香港の別荘に金博士は健在か! あーら嬉しや、これでもう大願成就《たいがんじょうじゅ》だ」
という次第で、この特使閣下を、わたくしが案内して、博士のところへ連れていってやったのである。この特使閣下は、自国宰相《じこくさいしょう》の面影《おもかげ》に生きうつしで、影武者に最適なりとの評判高き御仁《ごじん》で、そのままの御面相でうろつかれては、宰相と間違えられていつ
前へ
次へ
全22ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング