るときは、海底の軟泥の中をかきわけ、また或るときは、山のような巌床のうえへ匐《は》いあがり、そうかと思うと、急に水面に浮かびあがり、いろいろと力のかぎりをつくして展望したのであった。――だがついに私の得たものは、はげしい疲労と、真暗な絶望とだけであった。
クロクロ島は、どこへいったか、影も形もないのである。
「ああ、――」
私は、ハンドルを握って仰臥《ぎょうが》したまま、長大息した。
どうしたのであろう、わがクロクロ島よ。このときぐらい私は血の通った生きた人間を恋しく思ったことはない。傍にいるオルガ姫は、なにごとであれ私の命令を忠実にまもる部下ではあったが、惜しいことに、彼女は人造人間だから、話しかけて、相談するわけにはいかなかった。
「ああ、話相手がほしい。すこしぐらい変でもいい、生きている人間の話相手がいてくれたら……」
私は、なんだか、めまいを覚えた。不安の影が、黒い翼《はね》をぐんぐんひろげて、私の体を包んでしまおうとする。このまま私は、深海に死んでいくのではないかと、心ぼそさが、こみあげてきた。私は思わずも、ハンドルを握りしめた。そして、誰も聞いていないのに、大きなこ
前へ
次へ
全156ページ中68ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング