「折角、祖国へ戻ってきたのに、何の風情《ふぜい》もなく、すぐさま追いかえして、気の毒じゃのう」
「いえ、今は、それどころでは、ありません。いずれ、あの世で、ゆっくりお目にかかりましょう」
「うん、わしも今それをいおうと思っていたところだ」
と、元帥はこたえた。元帥も、今度は、容易ならぬ決心をして居られる。うしろの壁に、一枚の色紙が懸けてある。その文字に、
“戦如風発《たたかうやかぜのはっするごとく》攻如決河《せむるやかわのけっするごとし》”
とあるのを、私は、大きな感動とともに、二、三度読みかえした。たしかに三略にある名句である。
私は、元帥に別れの挨拶をして、再び魚雷型快速潜水艇にうちのり、急遽《きゅうきょ》、クロクロ島へ引返したのであった。もちろん、オルガ姫を伴って……。
最大速力を出して、クロクロ島までは、四時間で帰りつくことができるはずだった。私はその間、元帥との会見に緊張しすぎた反動で、睡りを催しうつらうつらとしていたが、いつの間にかぐっすり寝込んでしまったらしい。
やがて気がついたときには、オルガ姫が、只ならぬ様子で、しきりに叫んでいるのが、耳に入った。――
「一
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