え、たいへん上機嫌でいらっしゃいました。どうやら、あなたさまは、御栄転になるとの噂が専らでございますわ。黒馬博士、このたび、あなたさまは、どっちの方面から、お帰りになったのでございますの」
「今度はね、私は……」
と、いいかけて、私はとつぜん、ごほんごほんと咳《せき》こんだ。こいつは油断がならない。マリ子という女は、へんなことを尋ねる。ことによると、第五列かもしれない。
「ああ、苦しい。海上があまり涼しかったもので、すっかり咽喉をこわしてしまいましてねえ。おい、オルガ姫|咳止《せきど》めの丸薬をくれないか、三粒あればいいよ」
オルガ姫は、私の前にいたが、鞄の中から、丸薬《がんやく》入りの缶を出して、私の掌《てのひら》に、三つの黒い丸薬をのせた。
「水、水を早くくれ」
オルガ姫は、水筒の水を、大きなコップに三分の一ほどついだ。
私は丸薬を掌にのせたまま、まず、水をぐっと呑みほした。
「あら、水の方を、先にお呑みになって……」
と、マリ子は、怪訝《けげん》な顔。
私は、彼女の見ている前で、更に怪訝なことをやってみせた。それは、そのコップを下におかないで、いきなりコップの口で、私
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