「すると、何者にも、追跡せられていないというのだね」
「そうだ。まず、九割九分まで、大丈夫だ」
「乗ってた飛行機は、どうした」
「ああ、あれか。あれは、操縦者なしで、いまだにどんどん飛行をつづけているだろうよ。そのうち、どこかの海へ墜ちてわからなくなるだろう」
「それはよかった。実は昨日、君のところからの通信以来、このクロクロ島も、すこし安心ならなくなった形だ」
 と、私がいえば、
「そんなことは、ないだろう。これほど高性能をもったクロクロ島が、敵のためにやっつけられてたまるものか」
 久慈も、かつて、このクロクロ島設計集団の一員だったことがある。だから彼は、クロクロ島に対する信仰が篤《あつ》かった。
「そうか。追跡している者がないと決ったら、まあ、下へ下りて休憩したまえ。食料も豊富だ。酒もある……」
 と、私がいっているとき、オルガ姫の声が、するどく響いた。
「超攻撃機六十機編隊が、北北東より、こっちへ来ます、高度四千五百……」
 私は、それをきいて、どきっとした。久慈の顔を見ると、彼も色を失っている。
「や、やっぱり、後をつけてきやがったか! 畜生!」
「仕方がない。戦闘だ! 
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