くすると、だんだん夢ではなく、テレビジョン電話で話しかけられているような恰好になってきた。
 X大使は、あの超人的な力をもって、今もなお私の脳髄に、不思議な力を働かせているのではないか。私は胸元をしめつけられるような苦しさに襲われ、はっと目ざめて、長椅子からとび上った。――しかし、それは、やっぱり夢であった。
 おそるべきはX大使だ。彼は、私の強敵だ。そのとき私は、ふと或ることを思いついた。いつか、「地球お化け事件」のことについて、怪放送を行っていた疑問の人物があったが、あの人物こそ、このX大使と同一の人物なのではなかろうか。
 彼は、私に、奇妙な質問を発し、人類は、「地球に於ける資源不足を、どう解決するつもりか?」と迫ったが、彼は、なぜそんなことを、私に訊ねる必要があったのであろう。いよいよ勃発《ぼっぱつ》する形勢の、第三次世界大戦の舞台に、彼X大使は、いかなる重要な役割をもっているのであろうか。
 私の悩みは、大使の訪問以来急に二倍にも三倍にも増大していったのである。


   落下傘《らっかさん》見ゆ――果して同志の六名か


 黎明《れいめい》が来た。
 クロクロ島は、いつしか
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