ように見えるさ、見えることは見えるが、勝者は敗者のもっていた資源を奪って使うといっても、敗者は全然|亡《な》くなったのではない。敗者といえども人間には相違ないので、ちゃんと生きているのだ。やっぱり喰わねばならない。しかも勝者も敗者も、人間であるからには、年と共に人口が殖えていく、だからいくら戦争をしてみても、資源の足りないことは、ついに蔽《おお》いがたい。つまり、人間の欲望を充たすためには、地球の資源では不足だという時代になっているのだ。そう思わないかね」
X大使は、すこぶる筋《すじ》のとおったことをいったのには、私も内心、畏敬《いけい》の念をおこさずにはいられなかった。しかし、ここで、この無礼者《ぶれいもの》に負けてしまってはならない。
「まあ、そういう風にも考えられる。しかし、まだ、いろいろやってみることがある」
「もちろん、やってみることはあるだろう。空中窒素《くうちゅうちっそ》の固定《こてい》のように、空中から資源をとるのもいい。海水から金《きん》を採るのもいいだろう。海底を掘って鉱脈を探すのもいい。しかしやっぱり足りなくなる日が来るのだ。そのときはどうするつもりか」
「どう
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