にした。
人間は不便だ。オルガ姫は、二十四時間働いていて、疲れることも知らなければ、睡眠をとる必要もないのだ。しかし私は、疲れもするし、食慾も起るし、また睡りもしなければならなかった。
さて、睡ろうとはしたが、私の神経は、いやに昂《たかぶ》っていて、いつものように五分とたたないうちに睡りに入るなどということは不可能だった。私は、長椅子のうえにいくたびか苦しい寝がえりをうった。
睡りかけると、急に心臓がどきどきし始める。そしてそれがきっかけのように、X大使の姿が目の前に浮かぶのだった。
(おい、どうだね、黒馬博士。わしのすばらしい透過《とうか》現象を見ただろうね。それから、君の脳細胞もまたオルガ姫の電気脳も、わしは、やっつけようと思えば、徹底的にやっつけられるのだが、それでは礼儀を失うと思ってあの程度に止めておいたのだよ。とにかく、気を付けなければいけない。これは、君への忠告だ。君たちは、自分の脳の働きについて、あまり自信がありすぎる。その辺をよく考えたまえ。地球の人間が、大宇宙で一番優秀な生物だと思っていると大まちがいだよ!)
X大使が、はじめは夢の中にあらわれ、それからしばらくすると、だんだん夢ではなく、テレビジョン電話で話しかけられているような恰好になってきた。
X大使は、あの超人的な力をもって、今もなお私の脳髄に、不思議な力を働かせているのではないか。私は胸元をしめつけられるような苦しさに襲われ、はっと目ざめて、長椅子からとび上った。――しかし、それは、やっぱり夢であった。
おそるべきはX大使だ。彼は、私の強敵だ。そのとき私は、ふと或ることを思いついた。いつか、「地球お化け事件」のことについて、怪放送を行っていた疑問の人物があったが、あの人物こそ、このX大使と同一の人物なのではなかろうか。
彼は、私に、奇妙な質問を発し、人類は、「地球に於ける資源不足を、どう解決するつもりか?」と迫ったが、彼は、なぜそんなことを、私に訊ねる必要があったのであろう。いよいよ勃発《ぼっぱつ》する形勢の、第三次世界大戦の舞台に、彼X大使は、いかなる重要な役割をもっているのであろうか。
私の悩みは、大使の訪問以来急に二倍にも三倍にも増大していったのである。
落下傘《らっかさん》見ゆ――果して同志の六名か
黎明《れいめい》が来た。
クロクロ島は、いつしか
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