れは肉眼で見分けることは、ちょっとむつかしい。オルガ姫のような人造人間でないと、うまく受信が出来ない。
色彩信号は、近距離用のものである。四、五十メートルも離れると、何が何だか、わからなくなる。
さて、どんな信号を送ってくるか。いや、それにも増して、私が悦《よろこ》んだのは、鬼塚元帥との連絡がとれる見込がついたことであった。色彩信号は、ごく最近、鬼塚元帥が考え出した極秘の通信法の一つであった。それを使うかぎり、鬼塚元帥からの通信であると考えて、まず間違いないのであった。
ああ、鬼塚元帥と連絡がつけば、きっと私は、愕《おどろ》くべきニュースを受取ることになろう。
金星超人《きんせいちょうじん》――海底にかくれた日本
色彩通信は、間もなく停った。
それとともに、水中塔は、ずぶずぶと、ベトンの中に沈んでいった。そして、そのあとは、平坦なベトン面となり終った。
「オルガ姫、信号の解読は、まだ出来ないのか」
私は、待切れなくって、催促《さいそく》をした。
「はい、もう五分間、お待ち下さい」
「早くやってくれ」
早くやってくれといいつけても、相手は人造人間だから、どうなるわけのものではないが、それにも拘《かかわ》らず、催促しないではいられない。私は、元帥が、なにをいって来たか、早く知りたくて仕方がないのだった。
「はい、解読を終りました」
「そうか。じゃあ、始めから、読んでくれ」
私は、胸をおどらせて、オルガ姫が、どんなことを読みあげるかと、それを待った。
「では、読みます。――鬼塚元帥は、黒馬博士|坐乗《ざじょう》の魚雷型《ぎょらいがた》快速潜水艇を認めて、博士の健在を大いに慶祝するものである」
「おお、そうか。想像していたとおり、やっぱり、鬼塚元帥からの通信だったか。それで、どうした。先を読め」
「――わが敬愛する黒馬博士に対し、甚《はなは》だ遺憾《いかん》なることなれども、余は博士を、当分の間、わが日本より閉め出すの已《や》むなき事態に至れることを、謹《つつし》みて通告する次第である」
「なに、日本より閉め出すというのか。オルガ姫、その先を……」
「――何故に、かくの如き手段をとるに至りたるかについては、余はその説明に、非常なる困難を覚ゆるものにして、まず劈頭《へきとう》において、わが日本国が、海面沈下《かいめんちんか》したることを告ぐるなり
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