か」
「うんにゃ、自殺は嫌いだ」
「じゃあ、どうするんだ」
「ふふふ、こいつはあまり誰にも聞かせたくないビッグ[#「ビッグ」は底本では「ビック」、73−下段−12]・アイデアだがね、外ならぬお仲間たちだから喋るが、実はアルプスの山の中へ立籠《たてこも》るんだ。氷に穴をあけてね。そこにいれば大丈夫だよ」
「なぜ」
「なぜって、例の怪物は今海底にいるところから考えると、あれは魚類の親類なんだ。魚類の親類なら氷の山の上までは昇ってこられないよ。もし来たら冷凍されちまうからね」
「なんだ、ばかばかしい。それにアルプスの中はいいが、末には食糧に困るぞ」
「うん、そのときは夜な夜な下山して、あの怪物狩をして、あべこべに彼等の肉でフィッシュ・フライを作って喰べる」
「はっはっはっ。そんなことはうまく行きやしないよ。僕はもっと違ったすばらしいアイデアを持っている」
「というと、どんな迷案かね」
「最もすぐれたアイデアだよ。某研究所が秘蔵している長距離ロケット機があるんだ。どうせそうすれば、あのロケット機に乗って地球から逃げ出す奴がいるに違いないから、前もってあの機中に潜伏していて、密航するというわけだ
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