た。
「あら、大隅さん。博士の胸がひっこんできますわ。なぜでしょうか」
「えっ、博士の胸が――」僕はおどろいて、博士の胸をみた。なるほど博士の白いチョッキがすこしずつ下にさがってゆく。僕はへんなことだとおもいながら、博士の胸をおさえてみた。すると、思いがけなく、博士の弾丸傷のところから、草色のどろどろした粘液がぴゅうととびだしてきた。僕たちはあっといって、博士のそばからとびのいた。
「へんなことがあるものですね」
「どうしたのでしょう。もっとよく調べてごらんなすったら」
僕はサチ子にいわれて、こんどは落ちついて、博士の死骸をふたたび検査した。僕は博士のチョッキを脱がせた。すると、本当とは信じられないほどの不思議なことを発見した。チョッキの下から現われた博士の身体は、硬い金属のようなものを昆虫の腹部のように重ねあわしてつくってあって、ピストルの弾丸が、あたりの継ぎ目を滅茶々々にこわしてあった。その下には、例の草色の粘液がじくじくと泡をふいていた。
「これはおどろいた。博士は人間じゃなかったんですよ」
「まあ。どうしたってわけでしょうね」サチ子は真ッ青になって、僕にすがりついた。このとき
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