、それをまず解決して行くのがこの道の妙諦《みょうたい》なんだ。案外それが、直接的な重大な鍵を提供してくれることがあるんでね」
「またおじさまの経験論ですか。それは古いですよ。統計なんておよそ偶然の集りです。確率論で簡単に片附けられる無価値なものですよ」
「条件をうまく整理すれば、そんなに無価値ではなくなる。まあ、行こうや」


   記録秘録


 桝形《ますがた》探険隊事務所では、帆村たちを、防弾天井越しに青空の見える円天井広間へ招じ入れた。
 桝形隊長は、帆村とは前々から或る仕事に関して同僚であったことがあり、しかもその当時帆村の並々ならぬ尽力によって、彼が危機を救われたこともあって、帆村に対しては最大級の礼をもってしなければならない立場にあった。だが、彼が心の底から帆村に感謝しているかどうか、それは分ったものでない。こういう場合、世間では先に自分を救った者を煙ったく思って敬遠したり、又ひどい例では、隙があらば恩人の足をすくって川の中へ放り込もうとする者さえある。
 桝形は、五十がらみの、でっぷり肥ったりっぱな体躯の男だったが、帆村たちの待っている青空の間へ足を踏み入れると、急にに
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