ぐ手をくだす必要がある捜査は、火辻の死体を探しだすこと、犯人らしい怪しい者を見つけることだった。
 ところが、紛失した火辻の死体は、どこへ持っていったのか、いつまでたっても発見されなかった。また、手とか足とか、その死体の一部分さえ、どこからも見いだすことができなかったのである。
「どうしているかなあ、このごろの警察は……。迷宮入《めいきゅうい》り事件ばかりじゃないか」
 町では、警察の無能《むのう》を非難《ひなん》する声が、日ましにふえて来た。
 戸山君たち五少年も残念がって、土曜日や日曜日になると、警視庁へ様子を聞きにいった。少年たちは、ダムこわしの機械人間の行方を早くつきとめて取りおさえないと、これから先、たいへんな事件が起こるであろうと心配しているのだった。しかし五少年は、火辻の死体紛失事件の方の重要性には、まだ気がついていないようであった。
 だが、やがてそのことについて五少年がびっくりさせられる日が近づきつつあるのであった。


   帰ってきた博士


 死刑囚の死体紛失事件があってから、二カ月ばかりたった後のことである。
 三角岳附近《さんかくだけふきん》は、急に秋もふか
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