ら一同は、また歩きだして、地階へのおり口の方へ向かった。
 機械人間は、あいかわらず、やかましい音をたてて一同のうしろからくっついて来る。
 はじめは、おもしろがっていた少年たちも、なんだか気味がわるくなってきた。
 博士は、歯をくいしばって、地階へ早くおりたいものと、足を床《ゆか》にひきずりながら進んでいく。見るもいたましい姿だった。
 階段をおりていった。
 幅のひろい階段は螺旋型《らせんけい》にぐるぐるまわっている。
 地階へおりることができた。天井の高い広間がつづいていて、各室は明るく照明されていた。しかし、さっきの爆発は、この地階にもある程度の損害をあたえていた。それは、見とおしのできる通路のところへ、部品や鉄枠《てつわく》などが、乱雑《らんざつ》に散らばっているのでそれと分かる。
 博士が心配すると思って、少年たちは、壁にぼっかりあいた穴や、こわれた戸棚《とだな》を見ても、あまり大きなおどろきの声を出さないことにした。
 目の見えない博士のいうとおりに、地階の中をあっちに歩き、こっちに歩きして、ついに探しているものの前に出ることができた。
「ああ、この機械にちがいないです。『遠距離《えんきょり》制御台RC一号』というネーム・プレートがうちつけてありますよ」
 戸山が、博士にいった。
「おお、それじゃ、で、どうじゃな、機械はこわれているかね」
「べつにこわれているようにも見えません」
「機械は動いているのかね」
「さあ、どうでしょう。機械が動いているかどうか、どこで見わけるのですか」
「パネルに赤い監視灯《かんしとう》がついていれば、機械に電気がはいっているのだ。それから計器の針を見て――」
「ちょっと待ってください。監視灯は消えています」
「消えているか。機械の中に、どこかに電灯がついていないかね」
「なんにもついていません。この機械に電気は来てないようですよ。あ! そのはずです。電源《でんけん》の線がはずされています」
「ふーん。それではこの旧式の制御台も動いていないのだ。待てよ、わしが来る前に、スイッチを切ったのかもしれん。君、戸山君。パネルに手をあててごらん。あたたかいかね、つめたいかね」
「つめたいですよ。氷のように冷《ひ》えています」
「え、つめたいか。するとこのところ、この制御台を使わなかったのだ。はてな。するといよいよわけが分からなくなったぞ。これはひょっとしたら……」
 博士は戸山の手をぐっと力を入れて握り、
「君たちは、気をつけなくてはならない。もしも何か怪《あや》しいことを見たら、すぐわしに知らせるのだよ。だが……だが、まさか、まさか……」
「なにをいっているのか、さっぱり分からない。おもしろくない。ほかの場所へいってみよう」
 気味のわるい声がひびいた。
「え、なんといった。今、ものをいったのはだれだ」
「私だ。なにか用かね」
「君はだれだ」
「私かい。私は私だが、私はいったい何者だろうかね。とにかくあっちへ行こう」
 がっちゃん、がっちゃんと、機械人間は、妙なことばを残して、奥の方へ歩みさった。
「だれだい、君は。ちょっと待ちたまえ」
「おじさん。今おじさんと話をしていたのは機械人間ですよ。奥の方へ行ってしまいました」
 戸山は、そういって、博士に教えた。
「やっぱり、そうだったか。ふーん、あんな口をきくなんて、とんでもない話だ。奥へ行ったか。それはいかん。奥には大切なものや危険なものがあるんだ。とりわけダイナマイトの箱が積んである。あれをあいつに一撃されようものなら、この研究所の塔《とう》は爆風《ばくふう》のためにすっ飛んでしまうだろう。君たち、早くわしをあいつの行った方へつれていってくれ」


   ダイナマイトの箱


 ダイナマイトの箱が積んであるという。
 それはたいへんだ。鉄の拳《こぶし》を持っている強力《ごうりき》の機械人間が、もしあやまって、そのダイナマイトの箱をぽかんと一撃したら、たちまち大爆発が起こって、建物も人間も岩盤《がんばん》さえ吹きとんでしまうであろう。
(なんだってこのおじさんは、ダイナマイトの箱なんか、たくわえているのだろう)
 と、少年たちは、へんに思いながらも、博士をたすけて、地階の奥へ連れていった。
「ああ、そこに機械人間がいます」
 井上少年が叫んだ。
「え、機械人間がいたか。なにをしている」
 博士が、見えない目を大きくひらいて、緊張《きんちょう》する。
「一生けんめいに、機械や何かを見ていますよ。あッ、箱を見つけました。たいへんだ。ダイナマイトと書いてある箱ですよ」
「ううむ。とうとう見つけたか。困った。手あらくあつかわないようにしてもらいたいものだが、……あッ、そうだ。さっきのふるい制御台を使って、あの機械人間を取りおさえてしまわねばならない。戸
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