く探してみてください。そのぶよぶよした海綿みたいなものを、どうか見つけてください。それが見つからないと、ああ、たいへんなことになってしまう」
「そんなものは、どこにも見えませんよ」
「ほんとですか。ああ、目が見えたら、もっとよく探すのだが……」
「そのぶよぶよした海綿みたいなものというのは、いったいなんですか」
「それは……それは、私が研究してこしらえた、ある大切な標本《ひょうほん》なのです」
「標本ですか」
「そうです。その標本は、生きているはずなんだが、ひょっとすると、死んでしまったかもしれない」
「動物ですか」
「さあ、動物といった方がいいかどうか――」
そういっているとき、がっちゃん、がちゃんと音がして、階段の上からおりて来る者があった。
少年たちは、その方をふりかえって、思わず「あッ」といって、逃げ腰になった。
階段をおりて来たのは、ものすごい顔かたちをした機械人間《ロボット》であった。
「おや、機械人間が、ひとりでこっちへ歩いて来るぞ。これは奇妙《きみょう》だ」
盲目の谷博士は、首をかしげた。博士はたくさんの機械人間を、この建物の中で使っていた。それを機械人間何号と呼んでいた。その機械人間たちは、博士が、特別のかんたんなことばをつづりあわせた命令によってのみ動くのであった。ところが今、階段から、がちゃんがちゃんと、機械人間がひとりでおりて来たので、博士は怪《あや》しんだのだ。
その怪しい機械人間は、なぜひとりでおりて来たか。
盲目の谷博士と、怪しい機械人間は、どんな応対をするであろうか。
この奇怪な山頂の研究所にはいりこんだ五少年は、これからどんな運命をむかえようとするか。
気味のわるいしゃがれ声を出す者は、いったい何者であろうか。
少年の協力《きょうりょく》
がっちゃん、がっちゃん、がっちゃん。異様《いよう》な顔をした機械人間《ロボット》は、階段をおりきると、谷博士と五人の少年がかたまっているところへ、金属音《きんぞくおん》の足音をひびかせながら近づいた。
少年たちは、目を丸くして、このふしぎな機械人間の運動ぶりを見まもっている。少年たちは、科学雑誌やものがたりで、こういう機械人間のことを読んで知っていて、いつかその本物を見たいとねがっていた。ところが今、はからずもこの研究所の塔の中でお目にかかったものだから、少年たち
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