の運転手を叱りつけた。
「すみません。署長さんが、あまり急げ急げといわれましたし、それにまた、この車が思いがけなくとまりましたので」
「それはそうと、全員|総退却《そうたいきゃく》だ。何をぐずぐずしているんだ」
「ここまで来て、ひっかえすんですか」
功名心《こうみょうしん》に燃えている武装警官隊は、山形警部一人だけに手柄をされてなるものか、署長が臆病風《おくびようかぜ》にとりつかれたら、自分たちだけでも突撃しようという意気ごみであった。
「ばか。命令だから引っかえせ。たった今、山形警部から、短波放送で連絡があった。あと十分もすれば、原子爆弾の爆発がおこって、あの研究所はこっぱみじんに吹っとぶんだ。おまえたちは、原子爆弾の恐ろしさが分からないか」
「えッ、原子爆弾ですか。それではわれわれもまごまごしていると、原子病にかかるわけですね」
「そうだ。そのとおり。さあ、引っかえそう」
その時である。道の三百メートルばかり向こうで、ぱーッと物すごい土煙《つちけむり》があがった。
「さあ、ピカドンだぞ」
検事も、署長も、警官隊も、あわてて道のそばの谷そこへ逃げ込んだ。
「どうも君、へんだよ。いまのは原子爆弾ではなさそうだぜ。まだ研究所の建物は、あのとおり、しっかりしているじゃないか」
双眼鏡《そうがんきょう》で、おそるおそる研究所の方を見まもっていた検事が、そばの署長にささやいた。
「そういえば、なるほどそのとおりですね。どうしたんだろう」
これがロケット砲弾の砲撃だった。署長のことばが終らぬうちに、第二弾がとんで来て、乗用車もトラックも、こっぱみじんに吹きとばされた。さいわいに、警官隊はみな車をとびおりて、穴の中や谷底《たにそこ》にかくれていたので、人間の負傷はなかったが、もうこうなっては一行も進退きわまってしまったのである。
砲撃はますますはげしくなりはじめた。ところが、あまり狙《ねら》いが正確なので、かえって命には別条《べつじょう》がなかったのである。
その時、研究所の屋上からは、ものすごい閃光《せんこう》とともに、緑色の流星《りゅうせい》のようなものが、まっすぐに中天高くとびあがった。
「おや、あれはなんだ」
「きっとV一号だぜ」
その瞬間、砲撃がばたりとやんだかと思うと、大地もくずれるかと思われる大音響《だいおんきょう》とともに、目もくらむような赤・黄
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