じまったろう」
「死んじまったって。そんならたいへんだ。みんなで中へはいって、調べてみようじゃないか。そして、もしかしてだれか生きていたら、その人はきっと重傷をしているよ。ぼくたちの手で、すぐ手あてをしてやろうよ」
「うん。それがいい。じゃあ、あの建物の中にはいってみよう」
「よし。さあ行こう」
五人の少年たちは、研究所のこわれた戸口から、中へはいっていった。
「あっ、たいへんだ。中が、めちゃめちゃにこわれているよ」
「どうしたんだろうねえ。この建物は、なにをするところなの」
「なんとか研究所というんだから、なにか研究をするんだろう」
「ここは、有名な谷博士の人造生物研究所だよ。ぼくはおとうさんから聞いて知っているんだ」
戸山という少年がいった。戸山は、この少年団のリーダー格であった。あとの四人の少年もみんな同級生であった。きょうはいいお天気であったので、三角岳登山を試みたのであったが、途中で雷に出あい、洞穴《どうけつ》の中にとびこんで雷鳴《らいめい》のやむのを待った。そのうちに雷鳴ははげしくなり、前方に見えるここの塔の上に落雷したのを見た。
やがて雷雲が行きすぎたので、五人の少年たちは、目的地である三角岳の頂上まで登って来ようというので、ここまで登って来たわけ。するとこの研究所の建物がひどくこわれているので、それにおどろいて、中へはいったわけであった。
「あ、人がたおれている」
「ええッ」
「あそこだよ。白い実験着を着ている人が、たおれているじゃないか。壁のきわだよ」
「ああ、たおれている」
五人の少年たちは、谷博士を見つけた。そばへかけよってみると、博士は顔面や腕に傷をこしらえ、死んだようになっている。呼びおこしても、意識がない。戸山は、博士の鼻の穴へ手を近づけた。博士はかすかに呼吸をしているようだ。そこで彼は耳を博士の胸におしつけてみた。博士の心臓はたしかに打っている。しかし微弱《びじゃく》である。
「この人は、気をうしなっているんだよ」
戸山は、結論をつけて、みんなに話した。
「じゃあ、活《かつ》をいれてみようか」
井上《いのうえ》少年がいった。彼は、柔道を習っていて、活の入れかたを知っていた。
「それよりも、葡萄酒《ぶどうしゅ》をのませた方がいいんじゃないか」
羽黒《はぐろ》少年は救護係《きゅうごがかり》であったから、自分がリュックの中に持っ
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