少年たちが、こそこそ、こんな会話をしているとき、谷博士の前へ、少女がつかつかと出ていった。もちろんこの少女は、例の山形警部だった。
「谷博士、私をもとのからだに戻してください。こんなふうに、少女の姿で、いつまでも置かれるのはかないませんよ。私は我慢をしますから、すぐ手術をしてください」
山形警部の電臓を持った少女は、そういって博士に訴えた。
これには、まわりに立っていた氷室検事をはじめ同僚や部下の警官たちも、大いに同情した。
「さあ、それはわしには自信がないのですがねえ」
と、博士は、困った顔をして見せた。
「なぜです。それはなぜですか、私をこんな姿にしたのは、博士、あなたじゃありませんか」
「わしではない。X号がやったのです」
「でも、あなたが指導しました。あなたが手術のやりかたをX号に教えなければ、私はこんなからだにかえられなくてすんだのです」
「わしは、X号に強《し》いられた。そしてX号はわしの脳の働きを盗んだ。憎《にく》いやつだ」
「だから、博士、あなたは、私をもとのからだに直すことができるのです。私のもとのからだは、あの冷蔵室にちゃんとそのままになって保存されています。さあ、早く、あのもとのからだへ私の脳髄を移しかえてください。博士、お願いします。私は、こんな女の子のからだで、これ以上生きていられません」
娘姿の山形警部は、泣いて谷博士に訴えた。
だが、博士は首を左右に振った。
「お気のどくには思うが、すべては、X号のやったことです。わしには、そんな乱暴な手術をする勇気がありませんわい。わしに、それをせよといっても無理というものだ」
博士は尻ごみをする。
山形警部は、博士にすがりついて、いよいよ気が変になったようになって頼みこむ。それを見るに見かねて氷室検事も口ぞえをして、博士に頼んでみた。
ようやく博士は、こういった。
「それほどいわれるならば、いつしかわしの気持ちが非常によくなり、からだの調子も上々の日に、思いきって手術をしてあげよう。それまではおとなしくして待ちなさい」
これだけの口約束《くちやくそく》が、山形警部をたいへん喜ばせた。彼はもとのからだに戻る希望を持てる身になったのである。
三角岳《さんかくだけ》メトロポリス
それ以来、X号の乱行は、まったく見られなくなった。
そうでもあろう、X号の本尊である電臓
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