はっきり分る。分っているのは、答の千位の数字が7だというだけである。この穴を埋める答がもしも出たとしたら、それは出鱈目《でたらめ》のまぐれ当りか、それとも初めから問題を知っていたせいだろうと邪推する人があるかもしれない。しかしそうではなく、やはり推理の力でどんどん押していって、これが解けてくるのである。もちろん大骨が折れる探偵事件であるが、さように大骨が折れるところが、また虫喰い算ファンにとって、実にこたえられない快味である。では取懸ることとしよう。

       □7□□□
   _________
□□□)□□□□□□□□
    □□□□
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      □□□
      □□□
      ――――――
      □□□□
       □□□
      ――――――
        □□□□
        □□□□
        ――――
           0

 まず第一着手は0を探すこと。これは容易である。答の十位の□は0である。なぜなれば、八段目をよく見ると一度に上から二桁下りている。だから答の十位は0であることは歴然である。そこで□の中に0を書き込む。
 次は、答の万位と一位は、共に7より大なる数字だと分る。つまり8か9であろう。なぜなら、7の場合は、計算すると五段目のとおり三桁であるのに、万位の計算である三段目も、一位の計算である九段目も、共に四桁の数字である。であるからして、どっちも7より大きい8乃至《ないし》9であることが分る。
 それから次は、六段目の左端に目をつける。これは1であらねばならぬ。七段目で一桁下って引いてあるが、その下にも何もないのであるから間違いなくそれは1である。
 それから今度は、二段目左端の除数の百位の数字が1であらねばならぬと判定を下す。なぜなれば答の千位の7を、三桁の除数に掛けたものが、五段目に出ている如く、やっぱり同じ三桁であるからには、除数の百位の数字は1であらねばならぬ。もし2以上であったら四桁以上になるから不合理だ。
 三段目左端と、九段目左端は、共に1であらねばならぬ。なぜなら、除数の百位の数字が今1と決まった以上は、この四桁の数字の左端はどんな数字を掛けようが1以外にはなり得ない。
 すると八段目左端も1であらねばならぬ。なぜなれば、この八段目は九段目と同一であるか
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