わーン、ぐわーン。
 ずしんずしんごごごーっ。
 あっちにこっちに、硬い氷をやぶって吹雪のような氷片がとぶ。
 まっくろな硝煙は、氷上をなめるように匍《は》う。
 実におそろしい光景がいくたびとなく、くりかえされた。
 隊員は、声をからして、お互《たがい》にはげましあった。
 この猛烈な爆撃に、探険隊の天幕《テント》などは、一ぺんにふきとんでしまった。隊員のなかにも、怪我人《けがにん》がそれからそれへと現れ、流血は氷上をあかくいろどった。
 空魔艦は、都合三十個の爆弾をおとし、天幕がすっかりふきとび、怪我人が相当出たのをたしかめると、機首をかえして元来た北の空に姿をかくした。
 こうして危難はひとまず去った。
 大月大佐は、すぐさま人員点呼をおこなうとともに天幕の中にあった食料などをしらべた。
 怪我人は八名、死者は二名。
 食料品などが半分ばかり氷の下におちてしまった。
 かなりの損害であった。
 探険隊の運命はどうなるのか、たいへん心ぼそいことになった。
 その夕方、さわぎが一段かたづいたところで、大月大佐は隊員をあつめ、あらためてこれから探険隊のすることを相談した。
「やっぱり、
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