月大佐は、そういって身体をふるわせた。自分ははじめより生命を捨ててかかっているので、捨てる生命はい惜しくはないが、隊員たちの生命までここでむざむざ失うのは、たえられないことだった。若鷹丸は、いかに厚い氷にとざされても大丈夫だとうけあわれていたのに、こんなことになってしまって、すっかり予定がくるってしまったのだ。
 丁坊は、大月大佐が悄気《しょげ》ているのを見ると、気の毒にもなり、またこんなことではいけないと思った。そこで少年は、隊長をはげまそうと思った。
「隊長さん、どうせ死ぬことが分っているのなら、皆で隊を組んで、空魔艦のいるところまで攻め行ってはどうですか。僕は、そこまで案内しますよ」
「空魔艦のいるところまで攻めてゆく。あっはっはっ、お前はなかなか勇敢なことをいう」
 と大月大佐は、始めて笑いました。
「だって、何でもないではありませんか。幸《さいわ》い氷はどこまでも張っているから、氷の上の歩いてゆけば、きっと空魔艦の根拠地へつきますよ」
「それは容易なことではなかろうが、理屈は正にそのとおりだ。いや丁坊君。よくいってくれた。儂《わし》は大いに元気づいた。これから食料品や武器がど
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