く、つばさがぶるっとふるえると、たちまち黒煙をあげて、きりもみになって落ちていった。
「みごとに撃墜《げきつい》だ」
 げきつい[#「げきつい」に傍点]――という言葉はよくきくが、そのげきつい[#「げきつい」に傍点]を見るのはこれがはじめての丁坊だった。
「じつにものすごいなあ」
 丁坊は感心をした。
 それをきっかけに、空魔艦のねらいはますます正確になっていって、一機またつづいて一機もうもうたる火焔《かえん》につつまれ、いずれも地上におちていった。
 それをみるより、のこりの三つか四つの敵機もおじけがついたのか、くるっと機首をまげて、向うへとんでいった。敵は空魔艦にかなわないとみて、どんどんにげだしたのだ。そうして遂に、敵機のすがたは見えなくなった。
 空魔艦は、べつに後からおいかける様子もなく、ゆうゆうと高い空をとびつづけるのであった。
「なんという強い飛行機があったものだろうか。一体どこの飛行機なんだろう」
 丁坊はすっかり感心したり、ふしぎにおもったりした。
 空中戦がすっかりすんでしまうと、丁坊は身体《からだ》を寝台の上によこにしているのが退屈になった。
「誰かこないかなあ」
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