」
そうお礼をいって、丁坊は新聞を穴のあくほど見つめているが、それから一週間ぐらい経《た》つと、丁坊は大きな叫び声をあげて、ホテルの裏口からとびこんでくる。
「長谷川さんはどこにいるの。うわーい、新しい飛行機が出来たい」
丁坊は、手づくりのその模型をボーイ長の鼻の先へもっていって愕《おどろ》かせる。
「うーむ、これは何処で買ってきたんだい」
「買ったんじゃないよ。僕が一週間かかってこしらえちゃったんだい」
「あはっはっはっ。嘘《うそ》をつけ、子供にこんな立派な細工が出来るものかい」
と、ボーイ長は本当にしない。
そこで丁坊は怒《いか》って、それじゃ僕の腕前を見せてやろうというので、この頃はホテルの中で身体《からだ》の明《あ》いたとき、せっせと模型飛行機をつくっている。
ホテルで丁坊が儲《もう》けたお金のその半分は、模型飛行機材料を買うためになくなってしまう。
丁坊の家族は、お母さんが只《ただ》ひとりいるきりだ。お父さんは、今から十年ほど前、なくなった。このお母さんという人が変っていて、丁坊が飛行機模型をつくるのに、ホテルで儲けた尊いお金の半分をつかってしまうので、さぞお怒《
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