のような形をした長い口吻《こうふん》をもっていた。
 あまりふしぎな光景に、われをわすれて見とれていた風間三郎は、やがてのことに、はっとわれにかえり、
「クマちゃん。早くひきかえして、辻中佐たちにしらせようじゃないか」
「ああ、そうだったね。ぼくたちは、おもいがけなく斥候隊《せっこうたい》になっちまったね」
 そういって二人は、いつしか中ごしになっていたこしをのばした。そして岩の上をとんで、うしろへ引きかえそうとした。
 そのときだった。とつぜん、不幸なことが起った。
 三郎のすぐうしろにいた木曾が、どうしたはずみか、するっと、岩かどから足をふみはずしたのであった。
「あっ、しまった!」
 とさけんで、木曾は自分の身体をささえようとして、前にいた何にもしらない三郎の背中にしていたタンクにしがみついたのであった。空気があれば、いちはやく、そのけはいが、三郎にわかって、彼はうしろをふりむいて、応急処置ができたのであるが、なにしろ音というもののない世界だけに、三郎は木曾にしがみつかれるまで、何にも知らなかったのである。そして、
「あ、あぶない」
 と気がついたときには、もうおそかった。三郎の
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