て、また元のように艇長室へ戻ったのだった。
(こんなさわぎにぶつかるんだったら、本艇にのりこむ前に、もっと宇宙のことを勉強してくるんだったのになあ)
 三郎は、今さらどうにもならぬ後悔をした。
「そうだ。早く艇長さんが帰ってこられるといいんだ。そうそう、こんどこそ艇長さんの口にコーヒーが入るように、用意しておこうや」
 三郎は、三度目のコーヒー沸しを始めた。コーヒーは沸いた。
 しかし、艇長辻中佐は、部屋へかえってこなかった。
「ああ、惜《お》しいねえ。今、艇長さんがもどってこられると、コーヒーのおいしいところがのめるのだけれど……」
 艇長のもどってくる様子はなかった。
 三郎は、なんとかして、こんどこそは艇長にコーヒーをのませてあげたくて仕方がなかった。なにかいい方法はないであろうか。
 三郎は、しばらく小さい胸をいためて、考えていたが、やがて思いついたのは、今沸かしたコーヒーを、魔法瓶の中に入れて、司令室にいる艇長のところへ持っていくことだった。
「ああ、それがいいや」
 三郎は、元気づいた。早速《さっそく》魔法瓶にコーヒーをつめて司令室へ持っていった。
 ふくざつないろいろな器
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