いう話ばかりで、ぼくは面くらっているんだよ」
「なんだ、三《さ》ぶちゃんは、あの宇宙塵を知らないのか」
 と、鳥原青年は、鼻のあたまを手でこすった。
「宇宙塵というのは、わかりやすくいうと、星のかけらのことさ」
「星のかけら? じゃあ、隕石《いんせき》のこと」
「そうそう、隕石も、宇宙塵のお仲間だよ。隕石は、地球へおちてくる宇宙塵のことだけれど、この大宇宙には、地球へおちてこない星のかけらがずいぶん宇宙をとんでいるんだ。時には、それがまるで急行列車のように、或いは集中砲火のように、砂漠の嵐のようにとんでくるんだ。いや、それは、とてもわれわれ人間の言葉ではいいつくせないほど、ものすごいものなんだ。ちょうど本艇は、運わるく、その宇宙塵にぶつかったんだ。いや、宇宙塵が、斜めうしろからものすごいいきおいで追いかけてきたんだ。そして、あっという間に、がんがんがんと、うしろから本艇を叩きつけて通りすぎてしまったのだが、そのときに、宇宙塵が本艇の噴気孔を叩き壊していったらしいという話だ」
「へえ、宇宙塵というやつは、ものすごいねえ」
「そうさ。空の匪賊《ひぞく》みたいなものだ」
「空の匪賊だって、鳥
前へ 次へ
全115ページ中32ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング