鳥原は、そばへよってきて、
「どうもえらいことが起ったよ。本艇は、故障を起してしまったよ。そして、編隊からひとり放れて、もうずいぶん後にとりのこされてしまったよ」
 と、鳥原青年は、いつになく、おちつきをうしなっている。
「故障? 本艇のどこが故障したの」
「本艇の後方に、瓦斯《ガス》の噴気孔《ふんきこう》があるだろう。つまりわが噴行艇を前進させるために、はげしいいきおいでこの噴気孔から後方へ向け瓦斯を放出しているわけだが、その噴気孔が、どうかしてしまったらしいのだ。さっぱり速度が出ないうえに、妙な震動が起ってとまらないのだ。ほら、あのとおり気味のわるい震動がしているだろう」
「あ、なるほどねえ」
 鳥原のいったとおりだ。ぶるぶるん、ぶるぶるんと気持のわるい震動音がきこえる。
「鳥原さん、一体どうして、そんな故障が起ったんだろうねえ」
「それは、宇宙塵が襲来したからさ」
「宇宙塵? やっぱりねえ」
 三郎は、またわけのわからない宇宙塵の話にぶつかってしまった。


   修理困難


「鳥原さん、宇宙塵て、一体、どんなもなの[#「どんなもなの」はママ]。さっきから、宇宙塵だ宇宙塵だという話ばかりで、ぼくは面くらっているんだよ」
「なんだ、三《さ》ぶちゃんは、あの宇宙塵を知らないのか」
 と、鳥原青年は、鼻のあたまを手でこすった。
「宇宙塵というのは、わかりやすくいうと、星のかけらのことさ」
「星のかけら? じゃあ、隕石《いんせき》のこと」
「そうそう、隕石も、宇宙塵のお仲間だよ。隕石は、地球へおちてくる宇宙塵のことだけれど、この大宇宙には、地球へおちてこない星のかけらがずいぶん宇宙をとんでいるんだ。時には、それがまるで急行列車のように、或いは集中砲火のように、砂漠の嵐のようにとんでくるんだ。いや、それは、とてもわれわれ人間の言葉ではいいつくせないほど、ものすごいものなんだ。ちょうど本艇は、運わるく、その宇宙塵にぶつかったんだ。いや、宇宙塵が、斜めうしろからものすごいいきおいで追いかけてきたんだ。そして、あっという間に、がんがんがんと、うしろから本艇を叩きつけて通りすぎてしまったのだが、そのときに、宇宙塵が本艇の噴気孔を叩き壊していったらしいという話だ」
「へえ、宇宙塵というやつは、ものすごいねえ」
「そうさ。空の匪賊《ひぞく》みたいなものだ」
「空の匪賊だって、鳥
前へ 次へ
全58ページ中16ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング