うかと覚悟をしていたものの、いよいよ詔勅が下ったとなると、俄かに血が煮えくりかえるようです。思わずグッと握りしめた拳《こぶし》に、ねっとり汗が滲《にじ》みでました。
「皇国のために万歳を唱える」艦長は静にいいました。しかしその両眼は忠勇の光に輝いていました。
「大日本帝国、万歳!」
「ばんざーい」
「ばんざーい」
「ばんざーい」
艦内は破《わ》れんばかりに反響しました。
「次に――」艦長は語を改めました。「南太平洋に出動中の連合艦隊司令長官閣下から、本戦隊の任務について命令があったが、それを報告するに先立て、本艦の現在の位置について述べる」
乗組員は、いまや待ちに待った本艦の位置が判るんだと知って、思わず唾をゴクリとのみこんだのです。
「――本艦は現在、米国領ハワイの東方約二千キロの位置にある」
乗組員は、思わず口の中で、「あッ」と小さい叫び声をあげました。
ああ、×領ハワイ。
×国艦隊が太平洋で無二の足場とたのむ島。大軍港のあるハワイ。
そのハワイを更に東へ二千キロも、×国本土に近づいたところに、わが潜水戦隊は入りこんでいるのでした。
まるで×の巣の中です。ちょいと手を
前へ
次へ
全27ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング