ん。ここで騒いだり、悲観しては帝国軍人の名折れです。
(日本男子は、息の根のあるうちは、努力に努力を重ねて、頑張るのだッ)
大尉は日頃から思っていることを、口の中でいってみました。
見れば、×の攻撃機は、わが艦の砲撃をさけるかのように、やや向うに遠く離れて、もっぱら高度をあげることに努めているのでした。やがてこっちの手の届かない上空から爆撃を始めようという作戦なのでしょう。
「よおし、やるぞ」
大尉は何か決心を固めたものらしく、その両眼は生々と輝いてきました。
「潜航! 深度三十メートル、全速力!」
艦長は元気な声で号令をかけました。
艦はみるみる海上から姿を消して、なおもドンドン沈んでゆきます。潜望鏡も、すっかり水中に没して、今は水中聴音機が只一つのたよりです。こうなると、いつ飛行機から爆撃されるか、全く見当がつかなくなります。
乗組員は、艦長の心の中を、早く知りたいものだと焦りました。
「深度三十メートル」
潜舵手が明瞭な声で報告しました。
「よし、そこで当直将校、水中聴音機で探りながら、×の汽船の真下に、潜り込むのだ。丁度真下に潜っていないと、危険だぞ」
艦長の口
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