慣だということを後で知った。
 さいわいに海は畳のように平らかで、三浦須美吉は大して疲れもしなかった。もう三十キロも来たであろう。時刻もそろそろ夜中の十二時ちかくになるとおもわれる。
「がんばって漕げよ、若い者たち、もうあと半分もないぞ」
 酋長ロロは、こえをはりあげて、はげました。原地人たちは、きいきいごえをあげて、酋長の命令にこたえた。
 その奇声をじっときいている三浦須美吉は、ふだんののんきな性質もどこへやら、たえられないほどさびしい心になった。
(ああ、おれは今、二十四の青年だが、いったいいつになったら、救いだされて、あのなつかしい日本へかえれるだろうか)
 そう思うと胸がせまって、ほろほろと頬の上にあつい涙がながれた。
 その時だった。
 酋長が、何かするどいこえで叫んだ。
 原地人たちは、酋長の叫びをきくと同時に、ぴたり櫂をこぐ手をとめてしまった。そして、き、き、きと妙な声をあげ、あわてて例の頭巾を頭からすっぽりかぶった。
(どうしたのだろう?)
 三浦は、ふしぎにおもって、首をぐるぐるまわした。すると、はるか後の方に、ぴかぴかとへん[#「へん」に傍点]に光っている物がある
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