とを発見するかもしれない。そこだよ、大切なところは。これほど真面目な重大な使命が、ほかにあるだろうか。国防の最前線に立つ将校|斥候《せっこう》を、あえて君は不真面目というのか」
大佐の言葉は、一語一語、火のように熱かった。
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「ああ恐れいりました。私が考えちがいをしておりました」
太刀川は、はっとテーブルのうえに顔をすりつけて、大佐にあやまった。
原大佐の顔に、微笑がうかんだ。
「おお、わかってくれたか。太刀川」
「はい、わかりました。私をお選びくださって、忝《かたじけの》うございます。皇国のために、一命を賭けてこの仕事をやりとげます」
「おお、よくぞいった。それでこそ、私も君を呼んだ甲斐があった」
と、大佐はつと起立すると、太刀川の方へ手をのばした。二人の手はがっちりかたく握りあわされた。二人の眼は、しつかり相手を見つめていた。大きな感激が、大佐と青年との心をながれた。
やがて二人は、また席についた。
「原大佐。それで私は、どういう事をすればよいのですか」
「うん、そのことだ。いずれ後から、くわしく打合わせをするが、まず問題の場所だ。これは今もい
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