のですね」
 太刀川は、お許しがでたので、さてなにが出てくるかと、たいへんたのしみにしながら、缶の蓋を力まかせにこじあけた。
 蓋は、あいた。
 中をのぞくと、白い紙片を折りたたんだものがでてきた。それをつまみだすと、まだ缶の中に入っているものがある。缶をさかさまにすると、ごとんと掌のうえにころがり出たものは、ずっしり重い鉄片であった。その大きさは一銭銅貨ぐらいだが、厚さはずっと厚く、そして形はたいへんいびつで、砲弾の破片のようにおもわれた。しかもこの鉄片は、鉄のような色をしていないで、なにか赤黒いねばねばしたものに蔽《おお》われていた。まったく不思議な鉄片であった。缶の中には、そのほかになんにも入っていない。
 折りたたんだ紙片と、汚れた鉄片!
 この二つが缶の中から出てきたのである。
「その紙片をひらいて、そこに書きつけてある文章を読んでみたまえ」
 原大佐がいった。
「はあ、――」
 太刀川は、紙片をひらいた。とたんに彼は口の中で、おもわず、あっと叫んだ。


   太平洋の怪


 太刀川青年は、紙片をひらいて、何におどろいたのであろうか。
 それはほかでもない。その紙片が、た
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