、手を衛兵長の腰のあたりにさしのばした。
「これ、そばへよるな」
 衛兵長が、たじたじとなる刹那《せつな》、
「ええい!」
 クイクイの神様は、衛兵長の腰のあたりから、また一箇の鶏卵をぬきだして、その掌のうえにのせてやった。
「おお、神の力は、広大無辺である」
「あれ、いやだねえ。とうとうわしは卵を生むようになったか」
 衛兵長は、掌にのせられた卵を、気味わるそうにながめつつ、大まじめでいった。
 そばに立っていた将校や兵士が、くすくすと笑った。
 クイクイの神様になりすました三浦須美吉は、してやったりと、心の中でにやりと笑った。こんなことはなんでもない。ほんのちょっとした手品にすぎない。卵は、島で仕入れ、服の下にかくしておいたものである。
「こら、さわぐな」
 ケレンコ司令官が、にがにがしそうにどなった。
「子供だましの魔術をつかうあやしい男だ。だが明日の行動について、これから幕僚会議をひらくから、この男のとりしらべは後まわしだ。向こうへつれていって監禁しておけ」


   司令官室の激論


 室の外へつれだされて、クイクイの神様こと三浦須美吉は、(ほい、しめた)
 と、思った。

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