、手を衛兵長の腰のあたりにさしのばした。
「これ、そばへよるな」
衛兵長が、たじたじとなる刹那《せつな》、
「ええい!」
クイクイの神様は、衛兵長の腰のあたりから、また一箇の鶏卵をぬきだして、その掌のうえにのせてやった。
「おお、神の力は、広大無辺である」
「あれ、いやだねえ。とうとうわしは卵を生むようになったか」
衛兵長は、掌にのせられた卵を、気味わるそうにながめつつ、大まじめでいった。
そばに立っていた将校や兵士が、くすくすと笑った。
クイクイの神様になりすました三浦須美吉は、してやったりと、心の中でにやりと笑った。こんなことはなんでもない。ほんのちょっとした手品にすぎない。卵は、島で仕入れ、服の下にかくしておいたものである。
「こら、さわぐな」
ケレンコ司令官が、にがにがしそうにどなった。
「子供だましの魔術をつかうあやしい男だ。だが明日の行動について、これから幕僚会議をひらくから、この男のとりしらべは後まわしだ。向こうへつれていって監禁しておけ」
司令官室の激論
室の外へつれだされて、クイクイの神様こと三浦須美吉は、(ほい、しめた)
と、思った。
前へ
次へ
全194ページ中174ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング