、あの弱々しい老夫人には似合わぬ腕節《うでっぷし》であった。
あやしい老夫人の腕力!
暗号無電
太刀川は、飛行艇にぶじ乗りうつることができた。
飛行艇サウス・クリパー号は、六つの発動機をもっている巨人艇である。見るからに、浮城といった感じがする。
金モールのいかめしい帽子を、銀色の頭髪のうえにいただいているのが、艇長ダン大佐だった。彼は欧州大戦のときの空の勇士の一人として有名な人物だった。
太刀川が入った客室には、二十四人の座席があった。彼が座席番号によって、自分の席をさがしていると、ダン艇長がつかつかとやって来て、
「おお太刀川さん。あなたの座席はここですよ」
といって、自ら案内してくれた。それは室の一番隅の席であった。
「やあ、すみません」
「いえ、こんなところでお気の毒ですが、きまっているので我慢してください。私はニューヨークの郊外に家をもっていましてね、私の家の隣が、あなたの勤めていらっしゃる四ツ星漁業の支店長花岡さんのお宅なので、いつも御懇意にねがっているのですよ。あなたもどうか、御懇意にねがいます」
そういってダン艇長は、大きな手で、太刀川の手を
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