太平洋はその名のようにふたたび平和にかえった。
ケレンコ、リーロフの両雄は、おそらく魔城と運命をともにしたことであろう。
小笠原諸島の南沖を西に進んでいたアメリカの大艦隊は日本の大陸政策を、さまたげる目的でやって来たのだが、途中、恐竜型潜水艦のため、大損害をこうむり、その二日後、やっとのことで、フィリピンのマニラにはいった。ダン艇長の報告で、共産党海軍の仕業とわかり、文句のいいようがなかった。その上、乗組員の士気が、おとろえたので、どうすることもできなかった。
しかし、これによって、太平洋は、永久に、波しずかなることを得るであろうか。
無事大任をはたした太刀川時夫は、これについて、原海軍大佐に、次のように語っている。
「日本の将兵はつよい。軍艦もすばらしい。しかし、これだけでは十分でない時代となった。太平洋の平和を永久にたもつには、どうしても正義の国日本が、今までにない科学兵器を発明することが大切である」
* * *
最後に、太刀川青年と一しょに、はたらいた人々は、どうなったであろう。ロップ島の酋長ロロは、よき酋長として附近の島々の住民たちからも敬《うやま》われ、三浦須美吉は、郷里平磯にかえり、相かわらず遠洋漁業にしたがっている。わが愛する石福海少年は、東京の太刀川の家にとどまって、昼は軍需工場にはたらきつつ、夜学に通って一生懸命勉強しているということである。
底本:「海野十三全集 第6巻 太平洋魔城」三一書房
1989(平成元)年9月15日第1版第1刷発行
初出:「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社
1939(昭和14)年1月〜12月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:kazuishi
2006年6月27日作成
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