「よろしい。君等の宣伝はその位にして、用件というのを承ろうじゃないか」
「ははは……太刀川君。まず腰を下したまえ、君がいかに強くても、もはや我々のとりこだ。生かすも、殺すも我々の意のままだ」
 ケレンコは言葉こそていねいだが、悪魔のような笑をもらしながら言った。
「だがとりこでも、君は大事なとりこだ。われわれは、われわれの目的のために、君をわざわざここまでつれて来たといってもよいのだ。君が、原大佐の頼みで、南洋にむかったと、スパイからの知らせによって知ったとき、一時はこれは困ったことになったと思った。だが、われわれはやがて、君をとらえて、君のすぐれた頭と、君の海洋学の知識を、われわれの目的のために逆に利用することを思いついたのだ。いや、君の頭と、君の海洋学は、絶対に必要なことがわかったのだ。
 われわれは日本をのっ取るために、おどろくべき熱心さで、長い間共産主義の思想をふきこんで来た。が、無駄であった。君等のいう日本精神は、びくともせず、この方法によるわれわれの計画は、完全に失敗してしまった。やはり、武力戦よりほかはない。しかし、日本には、世界無比の強大な陸海軍がある。通り一ぺんの軍備では、到底望をとげることは出来ない。そのことを十分知りつくしているわれわれが、ひそかにもくろんだものは何か。太刀川君。賢明なる君は、すでに承知しているであろうが、われ等がほこるべき海底要塞だ」
(うーむ)
 太刀川は心に叫んで、唾をのんだ。
「それなら、海底要塞とはいかなるものか。それは、君が我輩の申し出を聞いてくれる前に、説明することはできない。けれども、ここ数箇月間、世界中の新聞が、さわぎたてている太平洋上の海魔、即ち、君等が昨日とくと御覧ずみの怪物は、この海底要塞のほんの一部にすぎない。それはのびちぢみが出来て、潜望鏡の役目もすれば灯台の役目もする。しかもその先は、恐しい新兵器で武装されている。賢明なる君には、説明するまでもないことだが、これでみても、海底要塞が、いかに大がかりのすばらしいものであるかがわかるだろう。しかし、わが海底要塞はなお数箇所工事中である。そこに、君の智慧を借りたいところがあるのだ。また、わが海底要塞が、いよいよ日本攻略の行動を起したとき、日本近海の海底の状態、潮流の工合、港湾の深浅等、君のすばらしい海洋学の力を借りたいところがいたるところにあるのだ。ど
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