と、その費用などは、いくらもかかりはしないのである、ここまで申せば、何故《なにゆえ》に、人間の仕事が無くなるのであろうか、合点《がてん》が参られることと存ずる。
* *
戦争なども、生きた兵士を使うことが止められて、人造人間がドシドシ出征することになるであろう。
人造人間は、電波で完全に操縦が出来るようになろう。その時代には、造船所の代りに、人造人間製造会社が、驚くべき繁栄をなすことであろう。人造人間の幾師団かが、突撃するうしろには、人造人間母艦(というのはおかしいが)があって、死んだ人造人間兵士を収容しては、早速修理を加え、戦線に送り出すことであろう。
こんな機械兵士の跳梁《ちょうりょう》する時代には、その破壊力も、断然強くなるはずで、その内に世界大戦争が起って、その強烈なる科学戦は、生物的人間を一人のこらず、一瞬の間に打ち殺してしまうことがないとも言えない。そうなると、人間社会の最期の日が来る。地球上の人類や生物が悉《ことごと》く死に絶えて、その後に来るものは、無魂《むこん》の機械ばかりが、活動を続けてゆく。そのときの荒涼《こうりょう》たる光景を今胸に描いてみると、頭脳《あたま》がじりじりと縮《ちぢ》まって、気が変になりそうになる。――僕は、このようなストーリーの映画を監督して作りあげ、近代人に一大警告を与えたいと思う。
底本:「海野十三全集 別巻1 評論・ノンフィクション」三一書房
1991(平成3)年10月15日第1版第1刷発行
初出:「新青年」
1931(昭和6)年4月号
※「ニューヨーク」と「紐育」の混在は底本通りです。
入力:田中哲郎
校正:土屋隆
2005年6月14日作成
青空文庫作成ファイル:
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