《ロボット》!」
一同は同時に声を立てた。
ピューンと消音《しょうおん》拳銃《ピストル》が鳴りひびくと、覘《ねら》いあやまたず、銃丸は眼窩《がんか》にとびこんだ。全身真黒な人造人間《ロボット》がドタリと横に仆《たお》れた。「人造人間が死んだ」
誰かがそう叫んだ。ほんとに危いところだった。もうすこし気付きようが遅かったら、人造人間はこの部屋に爆弾の華《はな》を飾って、自分一人がのがれて行くかも知れなかった、と誰もが思ったことである。
「おお、血が垂れる。人造人間の血だ」と一人が頓狂《とんきょう》な叫び声をあげた。
「人造人間の血はおかしい」
「早く内部《なか》をしらべてみろ」
一同は人造人間をどう解剖したらばよいかとまどったが、それは意外にも手軽るに分解し、果然《かぜん》、鉄の外皮《がいひ》がパクンと二つに開いた。その中には、歯車や電池がぎっしり詰《つ》まっているかと思いの外《ほか》、身に軽羅《けいら》をつけた若い女の死体があった。とり出してみると、それは劉《りゅう》夫人に違いなかった。
「おお緑十八、われ等が副首領」
首領が自《みずか》らの覆面をとって、夫人の死体に縋《すが》りついた。それは兼ねて想像していたとおり×国大使ルディ・シューラー氏であった。劉夫人の身体は、まだ温かかった。首領が改めて僕の姿を探し求めたときには、僕は同志林田と共に、上海《シャンハイ》の上空を飛ぶ飛行艇の内にあった。
底本:「海野十三全集第1巻・遺言状放送」三一書房
1990(平成2)年10月15日第1版第1刷発行
入力:田浦亜矢子
校正:もりみつじゅんじ
2000年1月1日公開
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