の死体と同じ位置に置かれたことはいうまでもない。一行はこれから何事が起るかと、唾《つば》をのんで、帆村の一挙一動に目をとめた。
「さて――これから、ラジオドラマの台本《だいほん》を読んでゆきます。なにごとが起っても、どうかお愕《おどろ》きにならぬように」
 そういって彼は、部屋の真中に突立って、大声で読みあげていった。見ていると彼はそれを函《はこ》の中の人造人間に読み聞かせている様であった。然し鋼鉄人間はピクンとも動かない。
 帆村はジェスチュア交《まじ》りで、一語一句をハッキリ読みあげていった。彼は昔、脚本朗読会に加わっていたことがあったとかで、なかなかうまいものだった。
 一座はシーンとして、東京が敵国の爆撃機隊に襲撃されるくだりを聞き惚《ほ》れていた。すると第一場第二場は終って、次に第三場を迎えた。それは太平洋上に於ける両国艦隊の決戦の場面であった。
「太平洋上、決戦ハ迫ル――」と帆村は高らかに叫んだ。
「西風《せいふう》ガ一トキワ強クナッテキタ――」
 と地《じ》の文章を読む。これは昨夜《ゆうべ》、千葉早智子がたいへん気取って読んだところだ。
「……海面ハ次第ニ浪立ッテキタ」

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