こっちは、イワノフ博士である。人造人間エフ氏の身体をあけて、そこにぎっしりつまっている器械をなおしているうちに、彼はなにか気になる物音をきいた。
「はてな、あれはなんの音だろうか?」
博士は、どこかでざざあ、どどーんと、岩石がこわれておちる音をきいてたち上った。
「ふむ、あの探偵と小僧とが、脱走をしようとおもって岩穴《いわあな》をくずしているのかもしれない。きっとそれにちがいない。うむ、ひどい目にあわせてくれるぞ」
博士は、ピストルをもって、室を出ていった。地下道にひびく博士の足音。
博士は、帆村探偵と正太少年とを放りこんである土牢《つちろう》の前に、そっと近づいた。そして小さい格子窓《こうしまど》のところへよった。かすかな豆電球がともっている土牢であった。博士の目は、そのうすぐらい明りをたよりにして石牢の中をのぞいた。
「あっ、いた――二人とも、あそこに長くなって倒れている。さっきのやつが、よほどきいたとみえるな。これで安心、大安心だ。すると、あのもの音はマリ子を入れてある奥の牢の方かもしれない。そっちを見てこよう」
そういって博士は、地下道を奥の方へとはいっていった。
と
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