れとも先生が泣いているのかな。まさか先生ともあろうものが泣くとは考えられないけれど、いやそうではないかもしれない。先生でも、いよいよもうだめだというときには子供のようにわんわん泣くのかもしれない。よし、おれが助けてやろう」
大辻は、金網に手をかけて、ひっぱった。金網はすぽんとひらいた。中をのぞくと、そこははたして、深い穴で、彼の身体がやっとはいれるぐらいの太さはある。
「よし、こうなったら、はいっていくぞ」
大辻は大決心をかためて、足の方から穴の中へいれた。が、足は下までとどかない。そのうちに、つかまっていた草の根が、ごそりとぬけたので、あっという間に、彼の身体はすーっと下へおちだした。そしてやがてどしんという音とともに、穴の底に尻餅《しりもち》をついたが、そのとき何者か、きゃっといってとびのいたものがある。
大手柄《おおてがら》
大辻助手は、どんなにおどろいたか、しれなかった。なにしろ、高いところから、どすんとおちて、いやというほど腰をうった。さあ、すぐ起きあがろうとおもっても、腰ははげしくいたむばかりで力というものが、まるっきりはいらない。そばでは何者かが、きゃ
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