「ああ先生、あそこですよ。たいへんな煙がでています」
 と、前をゆびさした。なるほど、まっ黒な煙が、もうもうとふきだしている。
「そうだ。あそこにちがいない。おい大辻、全速力ですっとばせ!」
 帆村探偵の命令で、なお全速力で、現場に近づくにしたがって、爆発のため破壊された家や塀《へい》の惨状《さんじょう》が、三人の目をおどろかせた。現場ちかくで頤紐《あごひも》かけた警官隊に停車を命ぜられた。
「おいおい、ここから中へはいってはいけない」
 三人は車をおりた。帆村が口をきくと、非常線を通してくれた。三人は、地上に大蛇《だいじゃ》のようにはっている水道のホースのうえをとびこえながら、なおも奥の方へすすんだ。
「おい、そっちいっちゃ、あぶない。そっちには、まだ爆発していない火薬庫があるんだ」
 そういって一人の警部が、帆村たちにこえをかけたが、急に気がついたという風に、
「おう、帆村君か。君もやってきたのか」
 と、帆村に話しかけた。帆村がその方を見ると、それは彼と親しい警部だった。
「やあ、河原警部さんじゃありませんか。どうもご苦労さまです。一体どうして爆発がおこったんですか」
「そのこ
前へ 次へ
全115ページ中55ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング